最近、ドラッグストアでも漢方薬を取り扱うところが増えており、手軽に購入できるようになりました。また、生薬を取り扱う漢方薬局も依然として見られます。
漢方薬は、病院で処方されたりドラッグストアで販売されたりする製剤タイプ(エキス剤)と、生薬を煮出して飲む煎じタイプ(煎じ薬)の二つに大別されます。それぞれにどのような違いがあるか、どちらを選べばいいのか気になるかもしれません。
今回は、漢方薬の煎じ薬とエキス剤の違いについて、漢方薬剤師の西崎れいな先生に教えてもらいました。
煎じ薬って何?
煎じ薬とは、調合した生薬を水などで煮出してその成分が溶け出した液を薬として飲むことを指します。煎じて飲むため、「煎じ薬」と呼ばれます。これは漢方薬の伝統的な飲み方です。
煎じ薬にすることで、生薬の組み合わせや量を個人の体質や症状に合わせて調整できるというメリットがあります。また、香りを楽しんだり、煎じる行為によって患者さんが治療に参加していると感じたりすることができるのも、煎じ薬の利点といえます。
一方で、煎じる手間を感じることもあります。それに、生薬の品質には天候や産地によるばらつきがあるため、品質に差が出やすいという問題もあります。持ち運びや保管にも適しているとはいえません。
エキス剤とは?
漢方薬の品質や煎じる手間などを考慮して作られたのが、エキス剤です。エキス剤とは、製薬工場などで作られた煎じ薬を濃縮、乾燥させて顆粒や錠剤などの形にしたものを指します。例えるなら、豆から落としたドリップコーヒーが煎じ薬、インスタントコーヒーがエキス剤と考えるとわかりやすいかもしれません。
エキス剤は、手軽に服用でき、持ち運びや保管が便利というメリットがあります。また、味も調整されていて、煎じ薬より飲みやすくなっているものも少なくありません。子どもや高齢者など薬剤に対して敏感な人たちに少量ずつ使えるのも、エキス剤の良い点です。
さらに、大量生産が可能になったことで、高品質な生薬の安定供給が実現されており、厳格な製造および品質管理によって品質の均一化が図られています。しかしながら、この過程により、煎じ薬と比較して効果が穏やかな場合があることも否めません。また、個々の体質や病状に応じた細かな調整はエキス剤では困難です。
エキス剤は、1950年代から開発が始まり、そこから数年で現在使われているような、煎じ薬とほぼ同等の品質のエキス剤が登場したといわれています。1957年になると、薬局で販売される一般用の漢方製剤も発売されるようになりました。
煎じ薬とエキス剤の比較
漢方薬の煎じ薬とエキス剤の違いを表にまとめました。

漢方薬を正しく理解し、自分に合ったものを選ぼう
現在、一般的な医療現場ではエキス剤が使われていることがほとんどです。しかし、医療機関によっては、煎じ薬とエキス剤を選べることもあります。好みに応じて、さまざまな漢方薬の使用方法を試してみるのもよいでしょう。漢方薬を煎じてみると、その香りのとりこになってしまったという人も少なくありません。一方で、手軽に持ち運べて飲むことができるエキス剤を上手に利用している人もいます。
大切なのは、飲み方も含めて自分に合った漢方薬を選ぶことです。ご自身の体質や状態に合った漢方薬を選ぶには、漢方クリニック、漢方専門医に相談することをお勧めします。漢方薬を正しく理解し、毎日の健康維持に役立てていきましょう。
TEXT/山本尚恵